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LUNATIC DOLL・11

Another Way 2



「よろしいのですか?」
『みずしろ』の中で、ひとりワインを飲んでいた修羅に、声がかかった。
「なにが?」
「お二人をあのままにしておいて――」
「かまわん。いつものことだ。年中行事の様なものだ」
「確かに…」
ほのかに笑いを含んだ声。それは『みずしろ』のマスターのものだ。
「よく来るのか?」
「一月に一度ほどお見えになります」
「客としては、どうだ」
「良いお客様ですよ。よく食べ、よく飲まれる…お友達を紹介していただいたこともあります」
「そうか…」
うなずいて、修羅はまたワインを口に含んだ。
「若…」
「なんだ?」
「では、あの方が若の――?」
問いかけに、修羅は視線で応える。
「失礼を――今まで気が付きませんでした。」
「いい。今日は馳走になったな」
「ありがとうございます」
「幾らだ?」
「そのような――」
「かまわん。今日の私はあいつらの連れだ――払う」
「では」
立ち上がり、会計をすませる。そのまま上着と荷物を――哲理の分も取り、軽く厨房を見やった。
「良い店だ…また寄せてもらおう」
「ありがとうございます」
もう一度マスターは言い、そして店主の顔に戻って言った。
「またのお越しをお待ちしております」

外に出ると、呆然と突っ立っている哲理の姿があった。その方に上着をかける。
「修羅…」
「相変わらずだな」
「悪かったね…こんな事になって」
「慣れている」
「…ごめん」
「いい。それより、お嬢が抱えている件はそうそう簡単にはいかんぞ」
「え?」
「そのものは大したことはないが――お前達の基準でいけば、色々とまずいこともある」
「どういうことだ?」
「それに、あちらの連中も動いている」
「敦彦か?それとも爺さんが――」
「昨日、お前のメールと一緒に、玖亥商事からも届いていた…私は動く」
「…」
にわかに、哲理の顔が険しくなる。今の哲理の状態を作り出した原因が、そこにある。
「お前も気をつけるがいい。なるべく火種は小さく、だ」
「ああ…」
応える声が昏い。
「それより、修羅、あいつの――美古都の件って、なんなんだ?」
「それはそのうち、お前の前にも現れるだろう。その時お前がどうするかは、お前次第だ」
「どういう意味?」
「私が手を下す前に、お前が現れないことを祈るよ」
「修羅…?」
ふっと笑うと――その端正な顔に笑顔が生まれると、そこに華が咲いたような錯覚を起こさせる
――修羅は哲理の肩に手をおいた。
「それより、今夜はもう空いただろう。私につきあえ。良い酒を飲ませる店がある。」
「…いいよ」
息をついて、哲理は苦笑した。何も言わないときは何も言わない。修羅はそういう人間だ。
「当然、お前のおごりだな」
「勿論だ――またしばらく歩くか」
「いいよ。腹ごなしになるし」
「では、行こう」
そして、二人はそこを後にした。

TO BE CONTINUED…


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