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LUNATIC DOLL・1

時代 NOAH




世紀末、という言葉が好んで使われだしたのは、いったいいつの頃からだろう。

確かに、石炭石油から原子力。電気にガスにテレビ電話。FAX、携帯電話、そしてパソコン、 モバイル…と、目まぐるしく発展した人類の百年、われらが愛すべき二十世紀は、 もうそろそろ終わりを告げようとしている。そして、今や「この世界」の「この時代」は、 「世紀末」の名に相応しく変貌していたのである。
すなわち、世に言われる『オカルト』化であった。
数年前までマンガに氾濫し、その手の小説が山のように売れていたというその『オカルト』 モノであったが、その状況が現実になるとは、いったい誰が想像し得たであろうか。
だが、「それ」は確かに起こってしまったのである。
事態は198×年の夏頃から起こったと言われているが定かではない。いつのまにか、 人々のまわりには頻繁に「魔物」らしきものが出没するようになった。
最初に火をつけたのは地方のテレビ局だったらしい。「幽霊」さわぎが高じているうちに、 それらはどんどん増え続け、おまけに当時世界各地におこった地震も重なって世間はひっちゃかめっちゃか。 そうこうしているうちに「独占手記、私は鬼だった」とか「今あかされる、神秘の生き物たち」 とかいう本が馬鹿売れし、偽物だろうとたかをくくっていた人々の前に自称『妖魔』軍団も飛び出して 自衛隊は大わらわになり、悪さをする『闇−マイナス−』のやからに対して 正義の味方と言わんばかりに神様やら精霊やらの『光−プラス−』のやからが出てきて、 SFマンガや伝奇小説も真っ青の攻防戦をくり広げ、一部ではとうとう核も使われて…世界は恐慌状態だった。
同時に人のなかからも ――最初は敬遠され、嫌われていたものの、背に腹は代えられないのだ ―― 超能力者や、霊能力者に魔道師に自称『ニュータイプ』まで出てくることになった。 それまでの歴史の中で、「非科学的」とされ、キワモノとされてきたすべてのものが――まあ、 本当にキワモノなのも多かったのだが――まるでせきを切ったかのごとく、 人間社会に溢れ出してきたのである。…最近の新聞の見だしと言えば『多発!妖魔による婦女暴行事件』 だの、『新政党結成。とうとう妖魔に選挙権が?』だので…もちろん、 世の中そんなに馬鹿馬鹿しいだけで繋がっていくわけはなく、深刻な問題だったのだが――それでも、 人類は強かった。
そう、人類は強かった。
なにしろ、自分たちが地球の頂点にいると信じて疑わず、平気で自然を破壊し、 そのツケを払うことすら厭うほど図太い生き物なのである。
人類は強かった。要は――習うより慣れろ、なのである。
人々はもう、大抵の幽霊話に驚かなくなった。幽霊だって現出化してしまう世の中なのである。 事故の多発する交差点が噂になることもなくなってしまった。だって本当に見えるのだから。 (勿論個人差はあるのだが)実際に見れば、驚いて逃げ出すかもしれないが、 その後は交番に飛び込むようになった。警察庁は仕方なく、各県警に要請して――むろん、 庁自体も動いていたが――対策本部をつくるよう指示を下した。ところによってはそのために課を作り、部を作り、 あるいは専門署をつくり…てんやわんやになった。当然、警察だけではなく、 行政やら司法やら自治体にも相談所や専門機関がおかれることになってしまった。日本だけではない。 世界中で…宗教団体もフリーメンソンも秘密組織もむろん国家もまきこんで――そう、 「連中」は何かと問題を引き起こすのが大好きなのだ――世界は騒然としていた。
そう。
時代は、まさに世紀末、なのだった。

これは、そんな世界の、おとぎばなしなのである。

TO BE CONTINUED…


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