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海の月


●はるひさんからのメッセージ●
先日、くらげさんのWEBで、2度目のキリ番を取ってしまいました(^^;)
そこで、またくらげイラストのリクエストをさせていただいたのですが、
さすがに貰いっぱなしは気が引けます(^^;)
しかし、わたしができることと云えば、お話を書くことしかありません。
短いお話ですが、この「海の月」をくらげさんに差し上げたいと思います。
くらげさん、受け取ってくれる?


勿論、受け取らせていただきます\(^O^)/はるひさん、ありがとう!! /FROMくらげ





秋の海は嫌いだ。
日焼け跡が抜けていくように海の色まで薄くなる。
じりじりと肌を焦がした太陽はどこに行ってしまったのか。
白茶けた砂浜、高く澄んだ空。素足にからみつく波さえよそよそしい。
ひんやりとした風が、わたしの髪をなぶる。
片手で髪を押さえ、もう片方の手で軽くスカートをたくしあげ、海へ。

ざざ、ざざ、ざざ。

静かな波が押し寄せる中、まるで吸い込まれるように、海へ。
足元では砂が頼りなく崩れ、波がその砂を攫う。わたしは眩暈を起こしたように、前へ、前へと
進んでいく。
気がついたら、せっかくたくしあげていたスカートは飛沫を浴びて、もうびしょぬれだった。わ
たしはあきらめて手を放し、どんどん歩いていく。
腰の辺りの深さまでくると、わたしは砂を蹴って、泳ぎはじめた。
冷たい海水が髪の間に潜り込み、首筋を通ってわたしの身体を包み込む。

しばらくすると、冷たさにも慣れ、逆にあたたかさまで感じるようになる。
スカートが足にまとわりついて、泳ぎにくいのは仕方なかった。
泳ぐのをやめて、くるりと仰向けになって空に顔を向ける。
白っぽい太陽が、うっすらとたなびく雲の中に浮かんでいる。
ああ、秋だ――。
もう、夏は終わってしまったのだ、あの恋と一緒に。
――不思議と涙は出なかった。
今も、彼と毎年来た海に泣きに来たというのに、一向に涙の出る様子はない。
ただ、海にぷかぷかと浮かび、それを気持ちよい、とまで思ってしまっている。
秋の海なのに。

秋の海は嫌いだった。
夏のにぎやかさが嘘のように静まり返り、色彩がなくなっていく。ひんやりとした波は、わたし
を拒んでいるように思えた。
それなのに。
今わたしはこうして海月のように何も考えずにぽかん、と空に浮かぶ太陽と雲を眺め、波間を
漂っている。

――なんだ、秋の海ってやさしいんだ。

耳元でささやく波の音は、ささくれだったわたしの心を静めてくれる。
さわやかな潮のかおりは、よどんだ頭をすっきりさせてくれる。
大きく深呼吸して、目を閉じる。
もう少し――もう少し、このままでいよう、だってとても気持ちがいい。

わたしはただ、ゆらゆらと海に漂う。
まるで、海月のように――。

PRESENTED by  はるひさん


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