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今まで読んだ本の所感

その他


御大は多作なのだ

栗本薫は多作である。いったいどれくらいの本をどの位のスピードで書き続けているのか、ライトなファン(?) である私には見当もつかない。(知りたい方はWebなどで一覧を作っておられる方もいらっしゃるので探してみましょう(^^)) 御大の本は相当読んだと思っていったのだが、最近、未読が山のようにあるのを知った。 読む本が増えて嬉しい気もするが、まあ一度に読めるものではないのである(笑)
というわけで、ここではグイン、魔界以外の本の所感を載せてます。本当は「伊集院シリーズ」 だけでも別にするべきだと思いますが(^_^;)まあ、おいおい・・・ですね。

評価はあくまでくらげの主観。☆は★の1/2になります
19981016現在
伊集院大介シリーズ ルビー文庫
タナトス・ゲーム ★★☆★★ レクイエム・イン・ブルー4
「紅の終章」
★★★★
真・天狼星ゾディアック第6巻 ★★★★★  


「真・天狼星 ゾディアック」第6巻
講談社ソフトカヴァー
栗本薫の名探偵、伊集院大介シリーズの中で異彩を放つ「天狼星」シリーズの最新刊。 「トーキョー・ヴァンパイア殺人事件」の謎が解かれる。「ゾディアック」とはいったい…?!
結局買ってしまった(笑)MLで話題にされてしまうと悔しくて結局読むんだな(涙)
さて、上に書いたように「天狼星」シリーズは伊集院さんのシリーズでは特殊です。 というか、他の作品が一応「ミステリ」という名前の上にのっかってるのに対して、 「天狼星」はもう疑う事なき栗本レーベルだからです。ノンジャンルで、あやしくて、 美少年が闇の息を吸い込み、哀しい孤独な魂たちが描かれる。そう言う意味では 「ゾディアック」も素晴らしい一編でした。ただし、長すぎた嫌いがあること、 台詞まわしで舞台が構成されすぎていることが難でしたね。 それでも6巻はいろいろと新しい進展があって面白かったです。ブラック晶くんの目覚め。 シリウスと伊集院さんの共感、伊集院さんの苦悩と葛藤など。 でも黒崎のあの状態は…あまりに子供じみすぎてちょっと白けてしまったなあ。 それも書きたかった事のひとつなんでしょうけどね。
そして何より…くらげは同時に「ヴァンパイア」も読んでしまったので、 1〜3巻の重なり具合がどうも不服でした。視点と感性を変えて書いてあるのは判るのですが、 先に書いたように最近の御大の文章は直接話法が多い、つまり台詞まわしで物語が進んでゆきます。 視点を変えても台詞自体は変わらないので、読み飛ばしたところがたくさんありました。 勿論後からしっかり読み直してはいるのですが、なんとも「つまんない〜」 と感じてしまったのです。折角の晶くんの視点が、それに覆われる形になってしまいました。 こういう形でしか発表できなかったのかなあ、と残念に思います。
しかし、御大の物語を読んでいるといつもデ・ジャ・ヴュにおそわれます。 (まあ、これは昔からそうで、くらげは御大の作品にはいつも「なんで私が書きたいことを先に…」 と悔しい思いをしていますが(笑))今回も「新しい時代の新しい犯罪」 がキイワードになっていたにもかかわらず、どこかそれに既視感を感じました。 多分、根底に流れるものがやはり時代を超えて人々の持つ「孤独感」「喪失感」 だからなのかもしれません。ただの我が儘な、嫌なやつ、というキャラクターはあまりいませんからね。 みんななにがしかの「喪失感」を抱えてるからこそ、犯罪に走る、という感じがします。 それがたとえ許されないことだとしても。御大って結局「性善説」なヒトだなあ、 と思ってしまいました。(ただの「我が儘な嫌な奴」を書かせたら、宮部さんの右に出る人はいないと思う…) それにしても。「天狼星」好きなんですが、 その反面普通の探偵さんである伊集院さんを見ることが出来ないのは寂しいです。 「天狼星」と普通のヴァージョンと、どちらも書いてもらってバランスを保ってもらいたいなあ。 個人的には普通のヴァージョンの伊集院さんがとても好きなので。
さて、今回はともあれ姿を消してしまったシリウス。だんだん「ルパン」 (3世じゃないですよ、お若いかた。本家の「アルセーヌ・ルパン」よ) 化してきているような気が(笑)…まあ、ルパンはあんなに非情ではありませんけどね。 結局復活したし、決着つかなかったし。ブラック晶くんもまだ潜在しているようだし。 これも次巻…もとい、次刊がまたれるところなのでした。
#ついでですが(笑)伊集院さんが、黒崎が自分のことを「黒崎は〜」 と呼ぶのは自己を一般領域にまで拡大しようとする無意識のあらわれ、 と言っているのを読んで、同じく「くらげは〜」と言っている自分が恥ずかしくなってしまいました。 まあ、チャイルディッシュであることは間違いないですけど。 そうかあ、つまりは異様に自己顕示欲が強いのかもしれないな。くらげは(爆)



レクイエム・イン・ブルー4「紅の終章」
角川ルビー文庫
とうとうルビー文庫を買う羽目になってしまいました(^_^;)御大の最新作であります。今回は完結。いやめでたい。 まあ、本当に完結しているのかはアヤシイところですけどね。しかし事実関係はともかくとして、 御大自身があとがきに書かれていたように「ひとつの時代のおわり」であるのは間違いないでしょう。
この物語は、後からもう一度読み返すと、そうたいして素晴らしい、というわけでは無いような気がします。 設定としては結構、使い古された(少女マンガや昨今のボーイズラブにありがちな)ものだという気がするし。 でもそれはあくまで表の、うわっつらな部分であって、掘り下げてゆくともの凄く面白いお話でした。 人間関係も表に出ている部分と主人公たちの内面とでは違うし。それに何と言っても、今回は文章が生きていました。 少なくとも私はそう感じました。だから★は4つ。多少良すぎるかな、とも思ったのですが、久しぶりに 「栗本薫にイかされてしまった!!」という悔しい(笑)思いがあり、評価したいと思うのです。
特にレンのキャラクター、最初(一巻目)は狂言回しなのかと思うほど、ユキの印象ばかりが残っていたのですが、 ここへきて、物語のテンションと共に、レン自身のキャラクターも成長したんではないかと思います。 彼が高見沢と話すシーン、その後に芝居に現実を、現実に芝居を投射してしまうシーン、 「役者」になれず苦しむシーン、どれもこれも素晴らしいです。(本音を言うと、その「芝居」をそのまま 「お話」「小説」になぞらえて読んでいる私もいたりする:苦笑)そして初日の幕が下りた後、 茫然自失となっているレン。この時の彼が、私は愛しくてならない。初めて本物の「表現者」足り得た、 ということだと思うのですよね。
ただ、それだけにナギに関しては…作中でも作中劇中でもそうなのですが、もったいない。 そしてオチももったいない(苦笑)それしかなかったのかなあ。幕引きには少々役不足だと思うんですよね。 ナギって。もう少しほりこめば、いい音だしたような気がするんですが、今ひとつ書き込んでないような… そういうキャラクターなのかなあ。劇中でもそうだけど勿体ない。これで減点なんですね。
あとはサービスなのでしょうか(苦笑)まあ、ルビー文庫ですからね。「攻め様」 なんてえ言葉が出てきても、判らない読者はいないでしょうけど。出待ちの子たちの反応が面白かったですねえ。 これ、「ゾディアック」でやられた時はかなり渋面だったのですが、書かれる場所が場所なら面白く感じるものなんですよね。 わはははは。
まあ、そういうことすべてを併せても、今回は「文章の魅力」に最大の賛辞を贈りたいと思います。生きていました。葛藤がありました。 走りすぎて苦いところも、だれてうっとおしい所もありました。おまけに書き残されたと感じるところもあるし、 見事に予定調和すぎて不満だってあります。でも、面白かった。…すべての人が同じように感じるわけはないけれど、くらげにとって久しぶりに、栗本薫を読んでて「面白い!!」と唸った作品なのでした。



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